2022/4/22

脂質の必要性と摂り方

 今回はエネルギー産生栄養素の3つ目、「脂質」について。
 
 脂質って結構難しいですよね。

色々な分類があって「?」ってなる方も多いのでは?
あと、「脂肪として体に溜まって悪いもの」ってイメージなどもあるのではないかなぁと思ったりもします。

 確かに体に悪い脂質ってものもあります。その代表格が「トランス脂肪酸」。
海外ではトランス脂肪酸を含んだものを表記するのが義務付けられている国もあれば、販売してはいけないところもあるほど、人体に有害なものです。
 保存が効くように、科学の力で元々の油をその構造式を変えてしまったものがトランス脂肪酸。生物界に存在しない脂肪のため、人間の体では消化もできなければ代謝もできず、排泄もできないという話も聞いたことがあります。

また、食べ物からの摂取が体内の脂質組成に反映されやすいという特徴があって

よくないアブラを長期に摂取することで慢性炎症を起こすので、どんなアブラを摂るのか?というのは大事なこと。


 少し話が逸れましたが、ここからが脂質について

脂質は3種類に分類できます。
単純脂質:代表されるのは中性脂肪と呼ばれるもの
複合脂質:細胞膜の脂質二重層の主な構成要素であり、体内での情報伝達にも関わる
誘導脂質:脂肪酸やコレステロールなど

 じゃあこれらの脂質は人体でどのような機能を持っているのか?
・生体膜の材料
・生体膜を透過できる物質
・エネルギーの貯蔵(断熱材やクッションとしての機能もある)
・神経の伝達における絶縁体としての機能
・細胞同士の緊急連絡用としての役割(いわゆるメディエーターとして)

 これだけ見ても、脂質が体でどれだけ大事な構成要素として利用されているかがわかりますよね!

細胞の表面

生体膜の材料

 人間の細胞の膜は脂質でできていて、うまく水に溶けるような特殊な構造をしています。画像にもあるように、それが脂質二重層といいます。生命は海で生まれたため、水と自分を隔てるために疎水性のあるアブラで膜を作ったとか。
 先ほど食べ物からの摂取するアブラが体内の脂質の組成に反映されやすいとお話しましたが、細胞の膜が脂質によって構成されているということは、やはり食べるアブラの質によって細胞の状態も変わるということ。人間は食べたものでできているというのはよく言ったものですね!

 良質なアブラを摂るという事は、細胞もよくすること。と考えていいと思います。

生体膜を透過できる物質

 また、細胞膜の表面には特定のイオンなどを通過させるチャネルと呼ばれるタンパクが存在するのですが、水・酸素・二酸化炭素・脂溶性の物質はチャネルを介さず膜の脂質を通過できます。簡単にいうと脂質は細胞に取り込まれやすいということですね。

エネルギーの貯蔵

 飽和脂肪酸は脂肪として体に蓄えられ、必要時にグルコースに変換されエネルギーとして利用できるようになっています。

ニューロン

神経の伝達における絶縁体としての機能

 画像を参照してほしいのですが、神経組織の中のニューロンには、「軸索」という神経の電気信号を次の神経や筋肉に伝えるための腕のようなものがあるのですが、その腕の周りに脂質である髄鞘が巻きつき絶縁体として働くことで神経伝達速度を増加させる働きを持っています。

細胞同士の緊急連絡用としての役割(いわゆるメディエーターとして)

 あと、重要な部分は(ほとんど重要なんですけど)、細胞同士の緊急連絡用(炎症メディエーター)として使われているというところ。
 人間が怪我などを起こしたときに赤く腫れたり、熱を持ったりしますよね?

あれ、脂質が原材料になっているんです。

怪我をした際にそれを修復するための炎症は大切な作用です。

 その元となっているのはアラキドン酸、いわゆるオメガ6脂肪酸の一つです。必須脂肪酸のリノール酸から作られることも知られている脂肪酸ですが、それが、炎症物質であるプロスタグランジンなどの元となります。

 しかし、昨今の問題はそのアラキドン酸を摂りすぎていることにより、余計に炎症を起こしている人が多いということ。アラキドン酸は肉類に含まれるので、食の欧米化により肉を食することが多くなってしまった現代においては、過剰摂取している人が多いと思われます。これが炎症の元となり、痛みを長引かせたり、病気が治りにくかったりする原因の一つだったりするわけです。
 
 逆に抗炎症に働く脂肪酸もあります。

 アマニ油などに含まれるαリノレン酸、青魚などに含まれるEPAやDHAですね。摂りすぎることで出血傾向になる場合などがあるのでその辺りに関わる病気を抱えている人には気をつけてほしいところですが、一般的な人には積極的に摂ってもらいたい脂質です!

 なのでサラダにアマニ油をかけて食べたり、青魚を意識して摂る(摂りすぎは注意)、必要時はサプリメントから摂取する(サプリの話はまた別の機会に!)などで摂取して欲しい脂肪酸。

 DHAなんて脳機能にもいいですからね!

 オメガ6系であるリノール酸(大豆油、ごま油など)、アラキドン酸(レバー、卵など動物性脂肪)は意識しなくても摂れてしまうので、オメガ3系脂肪酸を意識して摂り、脂質の摂取バランスが良くなるようにしましょう!

 ちょっと専門的な話が多くて難しかったかもしれませんが、今回はここまで。

最後までお読みいただきありがとうございました!